厳冬に負けないアーユルヴェーダの過ごし方

厳冬とは
アーユルヴェーダでは冬は「初冬(へーマンタ)」と「厳冬(シシラ)」に分けられます。
厳冬とは、寒さが一段を厳しくなる1月か2月の時期を表し、冬の後半をいいます。
地域によっては異なるものの、気温が氷点下に達することもあり、身体は暖かさを求め、エネルギーの消耗も激しくなります。
温かい衣服、食べ物、住居を取り入れ、身体を冷やさないように注意しましょう。
この時期は、体が低温や乾燥に晒され、血行不良や肌の乾燥、風邪などのウイルス感染などのトラブルが増えがちです。
体は冷えて凝り固まりやすいので、肩こりや腰痛などにも気をつけましょう。
また、日照時間が少なくなるため、精神面へのマイナスな影響もみられ、気分が沈みやすくなることもあります。
厳冬のドーシャの傾向
厳冬は「ヴァータ(風)」のドーシャとともに、「カパ(水)」のドーシャが蓄積する季節です。
カパが蓄積すると、冷たさや重さを感じやすくなり、気持ちも内向的になりがちです。
体がエネルギーを蓄えようとする一方で、代謝が鈍くなり体が重くなりやすいです。
春になるにつれて気温が上がってくると、冬に溜まったカパが溶けて流れ出すため、カパが増えてカパの悪化した症状が出てきますので、厳冬の時期はヴァータの鎮静とともに、いかにカパを溜めないようにすることが、春のためにも大切です。
一年で最も寒さが厳しくなる時期ですので、特に体を冷やさないような生活を送りましょう。
厳冬によくある症状
厳冬に多くみられる症状は、ヴァータやカパの影響が大きく、初冬に見られる症状とほとんど同じです。
厳冬は、冷えにより体が凝り固まりやすいことが多くみられます。肩や首のこり、腰痛などに気をつけましょう。
口や鼻の粘膜も乾燥しやすく、風邪やインフルエンザ感染の原因にもなります。
家族からの感染するケースも見られますので、ご自身で予防することを意識しましょう。それにはアーユルヴェーダのセルフケア(生活処方)が役立ちます。
また、一層寒さが厳しくなるにつれて、カパも徐々に蓄積し始めるので、朝が起きれない、体が重い、倦怠感、運動不足といった状態が見られやすいので意識的に対策をしましょう。
日照時間も短いため、セロトニン不足で気分が落ち込み、うつ症状を感じることもあります。
一般的に「冬季うつ」などといわれる症状です。
体と心の不調
冷えや乾燥に伴う症状が
見られやすい
- 体が凝り固まりやすい
- 肩こりや腰痛
- 口や鼻の粘膜の乾燥
- 風邪をひきやすい
- インフルエンザ感染
- 血行不良
- むくみ
- 手足の冷え
- うつ状態
- 倦怠感


厳冬に取り入れたい生活処方
この時期は、体を芯から温め、全身を乾燥させないようにし、さらに日光を浴びることが重要です。厳冬に効果的なアーユルヴェーダの健康対策を紹介します。
METHOD
01
体を芯から温める工夫を
毎日ぬるめの湯船にゆっくり浸かったり、お鍋を食べたり、白湯や生姜入りのハーブティーやスパイスティーを飲んだりして、体の内側から温めることを積極的に行いましょう。
外出時は手足や首、耳などを冷やさなように、手袋、耳あて(イヤーマフ)、毛糸の帽子、マフラーなどを忘れずに。
なるべくオイルマッサージを行い、マッサージした後はゆっくり湯船に浸かり、体の芯から温まることが大切です。

METHOD
02
オイルケアを念入りに
最も乾燥している今は、外側からも内側からも全身にオイルを浸透させることが大事。
乾燥した肌に潤いを与えるためには、外側から
・オイルマッサージ(忙しい方は3点マッサージでOK)
・オイルうがい(ガンドゥーシャ)
・鼻オイル(ナスヤ)
髪や肌、喉、鼻など全身が乾燥していきますので、オイルを浸透させて保湿をすることが重要です。特に口や鼻の粘膜が乾燥しやすく、風邪などのウイルス対策にはガンドゥーシャや鼻オイルはおすすめです。
内側からは、料理にはギーを使うと良いでしょう。

METHOD
03
高カロリーや体が温まる食事を
この時期は、高カロリーのものを食べることをおすすめしています。この時期にダイエットなど行うと痩せるどころか体調を崩してしまいますので、注意しましょう。
寒さが厳しいので、食事は鍋料理がお勧めです。旬の野菜を温めることで、消化に優しく摂取できます。
また、この時期はブドウ酒(ワイン)、ウィスキー、ブランデー、ラム酒、ビールをお勧めしています。ただし、ほろ酔い程度の飲酒です。
この時期はカパをなるべく蓄積させないために、辛味・苦味・渋味を少し多くとるようにしましょう。

METHOD
04
意識的に日光を浴びよう
一年で一番日照時間が短くなる時期は、意識的に太陽の光を浴びることで精神的な安定を図ることができます。冬は日照時間が短くなり、セロトニンの分泌量が減り、うつ症状がみられやすいといわれています。ヴァータやカパの影響で、不安感や倦怠感を感じやすくなります。「冬季うつ」にならないためにも、なるべく朝日を浴びたり、日中散歩に行ったりしましょう。

CAUTION
!
避けるべき厳冬の生活処方
冷性は控えましょう。乾燥させることもNGです。
この時期は運動不足だったり、昼寝をしたりすると、カパが悪化して体調不良を感じやすくなります。
また、ダイエットはしないほうが良い季節です。消化に軽いものばかり食べているとヴァータを悪化させますので注意しましょう。
そして入浴はシャワーだけで済まさないようにしましょう。体の芯から温めることが大切です。
厳冬に取り入れたい
食材・スパイス
厳冬は体を温める食材やスパイスを使うことが大切です。
ヴァータやカパを鎮静するような作用のある食材やスパイスを取り入れたいですね。
ヴァータを鎮静させるために、甘味・酸味・塩味、温性・油性のあるものをとりつつ、春に向けカパを鎮静する
辛味・苦味・渋味、温性のあるものも少し増やしながら、ヴァータやカパを鎮静させましょう。
具体的な料理をあげると、お肉や野菜の鍋、辛味のスパイスを入れた野菜の炒め物など、食材やスパイスの効能を上手に取り入れましょう。
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参考文献
日本アーユルヴェーダ学会・訳. チャラカ本集総論篇. 3版, せせらぎ出版, 2019, 767p, p.122-124
クリシュナ・U・K. 古典から学ぶアーユルヴェーダ. 東方出版, 2019, p214, p.83-88