はじめてのアーユルヴェーダの基本用語ガイド

はじめに
日々の暮らしに自然なリズムを取り戻したい。
そんなとき、ふと出会うアーユルヴェーダの知恵は、私たちに優しく語りかけてくれます。
アーユルヴェーダは、インド・スリランカに伝わる5,000年以上の歴史をもつ伝統医学で、「アーユル(生命)」と「ヴェーダ(知恵)」をあわせて、「生命の科学」といわれ、健康で幸せに生きるための知恵がたくさん古典に記載されています。
今回は、はじめてアーユルヴェーダに触れる方が知っておくと役立つアーユルヴェーダ用語を、日常の視点とともに紹介します。
ドーシャ- 自分の“体質”を知るカギ
アーユルヴェーダの根幹にあるのが「ドーシャ(Dosha)」という考え方です。
ドーシャとは、私たち一人ひとりの体質・性格・傾向を形づくる生命エネルギーのこと。3つのタイプに分類されます。
ヴァータ(Vata):風のエネルギー。軽やか、冷たい、変化しやすい。創造的だけど疲れやすい。
ピッタ(Pitta):火のエネルギー。熱い、鋭い、情熱的。リーダー気質だがイライラしやすい。
カパ(Kapha):水のエネルギー。穏やかで安定、でも重くなりやすい。
自分のドーシャを知ることで、食事や生活習慣の選び方がわかってきます。
まるで“自分の取扱説明書”を手に入れ感覚ともいえるでしょう。
健康志向の高い方にはぜひ知ってもらいたい知識です。今日の体調から「今日は〇〇を取り入れよう!」と自分自身で簡単なセルフケアをできるようになります。
古代からの知恵なので、実際に自分の体の変化を実感すると感動しますよ。


アグニ - 消化の火こそ、健康の要
「アグニ(Agni)」はサンスクリット語で「火」を意味しますが、アーユルヴェーダでは消化の力=消化火のことを指します。アグニが強ければ、食べ物はうまく消化され、栄養が吸収されて元気になります。
反対に、アグニが弱っていると、未消化物(アーマ)が溜まり、体や心の不調を招く原因になると考えられています。
アグニを整えるには、以下のようなことが大切です。
・よく噛んで食べる
・食事の間隔をあける(消化の時間を確保)
・温かく軽い食事を心がける
・食べすぎない
アグニを守ることは、健康維持だけでなく、心の安定にもつながります。
サットヴァ - “心”を澄ませる透明な力
アーユルヴェーダでは、心の性質も大切にします。その中でも最も理想的な心の状態が「サットヴァ(Sattva)」。
サットヴァとは、純粋・調和・明晰さの象徴です。
サットヴァな食事(自然で新鮮なもの)、サットヴァな言葉(思いやりある言葉)を心がけると、自然と心が穏やかに、前向きになります。
「元気が出ない」「心がざわつく」と感じたら、サットヴァ的な暮らしを少しずつ意識するのがアーユルヴェーダ流のセルフケアです。
オージャス - 元気のもととなる“生命の輝き”
「なんとなく調子がいい」「顔色が明るい」。
そんなとき、私たちの内側には「オージャス(Ojas)」が満ちています。
オージャスとは、生命力・免疫力・輝きの源です。良質な食事や睡眠、愛情深い人間関係によって蓄積され、心身を元気に保つとされています。
反対に、ストレスや睡眠不足、暴飲暴食などはオージャスを消耗させてしまうと言われます。
日々の中で「オージャスが満たされる」ことは、病気を遠ざけ、幸せに生きる土台になります。
ディナチャリヤ- “1日”を整えるセルフケア
アーユルヴェーダでは、「1日の過ごし方」がその人の健康を決めると考えられています。
これを「ディナチャリヤ((Dinacharya)」といいます。
たとえば
・朝は日の出前に起き、歯磨きと舌磨きをし、常温の水を飲む
・オイルでセルフマッサージ(アビヤンガ)
・日中は白湯を飲む
・食事は消化の良いものを適量
・夜は早めに休む
これらを急に全部やる必要はありません。まずは、「白湯を飲む」など小さな習慣から始めて、自分のリズムに合うよう調整していきます。


リトゥチャリヤ- 季節に寄り添って生きる智慧
アーユルヴェーダでは、自然の変化(季節の移ろい)に合わせて生活リズムや食事、セルフケアを変えることが、健康持の大切な鍵だと考えられています。これが「リトゥチャリヤ(Rtu Carya)」です。
「リトゥ(Rtu)」=季節
「チャリヤ(Carya)」=繰り返す・習慣・実践
つまり、リトゥチャリヤとは「季節ごとのライフスタイルの調整法」です。
小さな“気づき”が大きな変化を生む
アーユルヴェーダの知恵は、どれも自然と寄り添い、自分自身と向き合うためのヒントを与えてくれます。
聞き慣れない用語もいろいろあって難しく感じるかもしれません。でも、自分の体と心を大切にする気持ちがあれば、アーユルヴェーダはやさしく応えてくれるはずです。
まずは、気になる用語を一つだけ理解してみて、自分の毎日に取り入れてみてください。
きっと、少しずつ、自分が整っていく感覚に気づくでしょう。
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参考文献
日本アーユルヴェーダ学会・訳. チャラカ本集総論篇. 3版, せせらぎ出版, 2019,767p
クリシュナ・U・K. 古典から学ぶアーユルヴェーダ. 東方出版, 2019, 214p